(988) 家族から「NYダウは下落しているのに、ETFの株価は下がっていない」といわれました。
(988) 家族から「NYダウは下落しているのに、ETFの株価は下がっていない」といわれました。
私は、今年の前半に、高い株価で米国株ETFを買ってしまったので、かなりの評価損を出しています。
私の家族のほうは、米国株が下がったところで買い、少し上がったところで利益確定を繰り返しているので、ここ数年では最高の利益を得ています。
きょうは家族から、「ニュースでは米国株が大きく値下がりしているといっているけど、日本のS&PのETFがあまり下がっていないのはどうして?」と質問されました。
「あ、それは円安が進んでいるからです」
「ドル建ての株価と円建ての株価の違いです」
とくわしく説明したので、家族としては理解できたようでした。
ついでに「プロだって為替を考えないで株安・株高って言っているくらいだから、シロウトでそこまでわかれば十分です」と言っておきました。
そこで、「プロだってわかっていない」という例をお話します。
最新号の「日経ヴェリタス」に、「思ったほどタカ派ではない」「米大幅利上げに冷静な声も、市場は動揺隠せず」という記事が載っていました。
この記事にはグラフが付随していましたが、腹立たしいほどのインチキグラフです。
グラフの部分だけ拡大してよく見てみましょう。
グラフのタイトルは「5月以降、ダウ平均の下落率は日経平均を大きく上回る」となっています。
図では日経平均を薄い線で示していて、ダウ平均を濃い線で示しています。
なるほど、見かけ上はダウ平均が下落しているように見えます。
私はこの記事を読んで、グラフを見て、直感的に「ウソだ」と思いました。
悪質なインチキグラフです。それとも著者はよっぽどアホか。
ほんとのことをお話します。
上の図は、「日経平均のETFの値動き」と「NYダウのETFの値動き」を、Yahoo!ファイナンスからコピーして、それらを重ねて作った図です。
この図を見れば、日経平均のほうがNYダウよりも下落していることがわかります。
日経ヴェリタスのインチキグラフと私が作ったグラフとでは、どちらが値下がりしているかということが逆になっています。
どうしてこの違いが出てくるのかを説明しましょう。
この図は、Yahoo!ファイナンスから、「ドル円」の推移を切り取ってきたものです。
青色の細い線で囲った範囲は、上の2つのグラフと同じ4月から現在までの期間です。
この図でみると、3月末から急激な円安になっていることが一目瞭然です。
私が作ったグラフの方は、日経平均もNYダウも金額は「円建て」です。つまり価値の基準は同一なんです。
もし、日経平均とNYダウをドル建てで表示したとしてもほとんど同じグラフになるはずです。
つまり、NYダウのほうが値下がりが少ないということがわかるはずです。
あらためて「インチキグラフ」のほうを見てみますと、日経平均の線は私の作ったグラフと相似しています。
ところが、ダウ平均のほうは私のグラフよりも大きく下落しています。
なぜこの違いがでるのか?
おわかりだと思います。
日経平均は円建てで表示していて、ダウ平均はドル建ての価格で表示していているからでしょう。
「円」という基準で表示したグラフと、「ドル」という別の基準で表示したグラフを、同一平面上に並べているんです。
為替がこんなに変動しているのに、それを無視しているのです。
「日経ヴェリタス」記事の著者は、経済記事を書くくらいですから、為替のことを知らないはずがありません。
毎日のテレビや新聞のニュースでも、「急激な円安」を問題視してとりあげています。
経済専門の週刊誌である「日経ヴェリタス」ともあろうものが、こんなインチキグラフを記事を載せているんですね。
こんな記事を書く著者も著者だけど、記事をチェックしているデスクもデスクです。
わかっていてこんな記事を載せるのだったら、かなり悪質な信頼できないメディアだと思います。
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