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2008年2月21日 (木)

(204)入力方式による差は大きいのか?親指シフトに関連して

(204)入力方式による差は大きいのか?親指シフトに関連して

杉田伸樹さんが、せっかくトラックバックを張ってくださっていますので、キーボード入力に関してもうちょっと突っ込んだ話をします。

結論から先にいうと、どんな方式でも「大きな差」はないと考えています。つまり、「差」は小さい、慣れている方式がイチバンということです。親指シフト方式がよければ、親指シフトを採用すればいいし、ドボラックが良いならそれで入力すればよいし、qwertyが良いならそれで入力すればいいと、私は考えています。

どの方式にしても、その人なりに習熟してしまうと、入力スピードは(私のカンですが)せいぜい10~20%くらいの差しかないだろうと思います。いくら違っても、50%も違わないでしょう。

どなたかが、「私は数種類の入力方式に、(自分としては)完全に習熟した」「その上で、『この!』方式のパフォーマンスが最高で、他の方式に比べて○○%高速で入力できる」とでも、発表してくれると良いと思います。

さて、もともと、qwertyの配列は、タイプライターでアームの絡みがなるべく少ないように、配列されたといわれています。そのためにワザと打ちにくく配列したといわれていますね。実際に、私自身、手動タイプライターの時代に英文入力していたころ、「the」なんて高速で打つと、[t]と「h]が絡んだりしていました。

ですから、qwerty配列そのものは、英文でも打ちにくいのです。そのキーボードでローマ字入力するんですから、打ちやすいはずがありません。まして、日本語をローマ字入力するのは、英文を入力するのとは、打つキーの頻度が違いますから、適切であるわけがありません。

そういことで、qwerty配列のキーボードでローマ字入力で日本語を入力するのは、2重の意味で適切ではないと考えます。ただ、単にそれまでのでデフェクトスタンダード(しかも欧文圏の)を引き継いだ妥協の産物でしかないと考えています。

一方、森田さんは、上記の2つの問題を充分研究した上で、親指シフト方式を考案したのだと思います。「jisかな式」は、どうにも入力しにくいことと、かな1文字に対して1つのキーを押すほうが日本語として自然である、と考えたのでしょう。

しかし、それでも、英文キーボードの規格に引きずられて、キーボードの形を少し変形するにとどまっています。つまり、本来なら、日本語入力に対してもっと別のキーボードのほうが効率が良かったのかも知れないということです。

別のキーボードというのは、キーの配列を変えるほかに、キートップの大きさとかキートップ間の距離とかも最適な形にするということです。

そういうことで、「親指シフト」というのも理想的な入力方式ではなく、ほとんど同じキーボードで英文も入力できるようにという妥協の産物でしょう。

も一度いうと、qwertyでローマ字入力するというのも妥協の産物で、親指シフト入力のキーボードで親指シフト入力をするというのも、妥協の産物でしかないということです。

だから、もし、どちらが良いかという論争をしても、「目くそ鼻くそを笑う」くらいの意味しかないと私は考えています。どうせ、各人がどの方式を採用したにしても、入力スピードには大きな差がないと思われるからです。

ローマ字入力から親指シフト入力へとか、その逆への方式転換は、したい人がすればいいだけのことと考えます。どちらにしても、「最高に効率がよい」というわけでははないでしょう。

ただ、私個人としては、すでに英文タイピングに習熟していたために、親指シフトが発表されたときに、それを試してみて違和感を感じました。また、その後、qwerty配列で「親指ひゅん」などを試してみても、優位性を感じませんでした。

現在は、私が使うキーボードは10種類くらいに及んでいますので、もし、親指シフト方式に移管する場合、自分のパソコンのすべてに親指シフトキーボードを導入する必要があります。200LXでも「親指ひゅん」のアプリケーションを常駐させる必要があります。

そういう手間をかけてまで、入力方式を変更することさらの理由もないので、従来どおりqwertyキーボードでローマ字入力を続けています。

杉田伸樹さんの「ブログ『親指シフトウォッチ』を始める」も読ませていただきました。興味深い問題について、トラックバックを張ってくださって、ありがとうございました。

付記:私は、「親指シフト入力方式」を否定しているわけでも、肯定しているわけでもありません。それは、ローマ字入力に対しても同じです。
ただ、「親指入力方式の優位性」をいうのに、20年前のコンテストでウンヌンといのは、ピントハズレということと、「今は、ローマ字入力のほうがずっと現実的」ということを言っているんです。

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コメント

私の書き込みおよびこちらへのトラックバックに関して、大変詳細な書き込みありがとうございます。お名前が分からないので、敬称は略させていただきます。

「ブログ『親指シフトウォッチ』を始める」をお読みいただき光栄です。ここで述べた基本的な考え方はブログを書き続けるなかで、まったく変えていません。

今回の貴記事に関して私の考えていることのうち、総論的な部分は拙ブログに別の記事で書きます。ここでは、個別の論点に関してコメントいたします。

1.まず、「親指シフト方式がよければ、親指シフトを採用すればいいし、ドボラックが良いならそれで入力すればよいし、qwertyが良いならそれで入力すればいい」というのは、私も同感です。文字入力の方法は優れて個人的な選択の問題ですし、私が何度もブログで述べているように、文字入力の方法の選択は最終成果物である文書(デジタルなものであれ、アナログなものであれ)の内容には影響を及ぼさないからです。

しかしながら、私は親指シフトが他に使われている方法よりも優れていると考えているので、それを広めようとしているわけで、自分自身のことを半分冗談ですが「親指シフトのセールスマン」と言っているのもそのあらわれです。最終的な選択の主体は各ユーザーですが、その選択を親指シフトにしてほしいとお願いしていると言ったら良いかと思います。

2.「『差』は小さい、慣れている方式がイチバンということです。」の後半部分はそのような面はあります。どのようなものであれ、仕事の手順を変えることにはコスト(金銭的なものだけでなく、新しい方法を覚えるための努力なども含めて)がかかります。だから、手順を変えることにより得られる利益がコストより大きくなければ変える意味がありません。これに加えて、新しい方法をとるには将来に対する不確実性という問題もあり、よほど納得できるような理由がないといけません。

では、前半についてはどうなのでしょう。ここには二つの問題があると考えます。一つは、入力方法の比較の指標としてスピードだけをとることの是非です。確かにスピードは数字で出ますので、分かりやすい面はあります。ただ、親指シフトを長く使ってきた人間の「勘」として、これだけをクローズアップすることは違和感があるのです。

「『親指入力方式の優位性』をいうのに、20年前のコンテストでウンヌンといのは、ピントハズレ」というのに私がなんとなく同感するのもこの点なのです。どちらかというと、使っていて疲れない、自然に使える、という感覚的な面で親指シフトを選択しているということが多い気がします。もちろん、こうした感覚は人に伝えるのがもっとも難しいものだし、人を説得するためにはもっとも非力なものであるのが悩みです。

もう一つの論点は「差」がどの位のものかということです。すでに述べた通り、まず「差」の定義をきちんとしなければならないという問題はありますが、ある程度きちんとした方法論に基づいたと考えられる実験の結果がありますのでご紹介しておきます。

http://nicola.sunicom.co.jp/spec/demand.htm
には、「練習時間別入力測定調査」というのがあります。これによれば、親指シフトは他の入力方法に比べて上達が速いことが示されています。40時間の練習後でローマ字入力の5割増し近くとなっています。

同じページにある「標準時間法による入力方式別速度比較実験」でも、親指シフトはローマ字入力に比べて約5割増しという結果となっています。

これらは、おっしゃられるような「『私は数種類の入力方式に、(自分としては)完全に習熟した』『その上で、『この!』方式のパフォーマンスが最高で、他の方式に比べて○○%高速で入力できる』とでも、発表」というものとは異なりますが(このような言い方をしているものは私もこれまで見たことはありません)、異なる入力方式の差の比較の一つの目安とはなり得ると考えます。

3.「もともと、qwertyの配列は、タイプライターでアームの絡みがなるべく少ないように、配列されたといわれています。そのためにワザと打ちにくく配列した」というのは、京都大学の安岡さんという研究者によれば根拠がない(特に後半)と考えられます。
http://slashdot.jp/~yasuoka/journal/413372

いずれにしても英語を打つのでさえqwertyは適していないというのは事実だろうと思います。ただ、これを日本語で使うことが「2重の意味で」というのはやや誤解を招く表現だと思います。つまり、英語に適したキーボードを使って日本語をローマ字入力すれば(実際にドボラック配列で日本語をローマ字入力する方法はあるようです)、使いにくさが軽減されるというのはない訳で、どちらにしても日本語入力に関しては根本に立ち戻って考え直す必要があると思います。

4.「英文キーボードの規格に引きずられて、キーボードの形を少し変形するにとどまってい」ることについては、神田さん(親指シフトの開発の責任者は神田さんです。森田さんはNECで「M式」とよばれるキーボードを開発した人です。)は、ご自身のホームページに、手の形のキーボードを開発段階では試作したことを述べています。ただし、受け入れられないだろうということで製品化は断念しています。
http://www.ykanda.jp/oyayubi.htm

私も、今のキーボードの形が最善であるとは考えていません。例えば、左手人指し指で右下のキー「B」を押すのは使いにくいと思っています。でも、これは親指シフトとは別の問題と考えた方が良く、要すれば、エルゴノミックキーボードに親指シフトを入れても良い(TRONやM式でもそのような考え方が取り入れられています)わけです。

だから、おっしゃられるように「妥協の産物」であるというのはその通りです。ただ、疑問に思うのは、こうしたもので妥協の産物でないものなんて本当にあるのか、ということです。そうでないとすれば、「目くそ鼻くそを笑う」という程度の違いであるかどうかは、実際に即して考えるべきもので、私は親指シフトに関してはそうでないと思っています。

5.使われるキーボードが多くあるのでそれらを全部変えるのは大変というのはその通りで、これこそまさしく変えることのコストです。ただ、親指シフトに関していえば、多くのプラットフォームで使えるようになってきていることは言っておく必要があります。ウィンドウズ、マッキントッシュ、リナックスでは実用的に使えるようになっています。USB接続の専用キーボードはこれらに共通して使えます。その他、携帯電話やPDAでも外付けキーボードを使って親指シフトが使えるようになっています。こうした状況は、親指シフトへの乗換コストを低減するのに役立っていると考えます。

以上、長くなってしまいましたが、親指シフトの側から見たコメントです。なお、私の記事に何人かからコメントがされています。こちらもご覧いただきますとありがたく思います。最後になりましたが、この記事を書いていただいたことにより、親指シフトの考え方を披露する機会を与えていただいたことに改めて感謝します。

杉田伸樹(ぎっちょん)さん、詳細なコメントをありがとうございます。

>一つは、入力方法の比較の指標としてスピードだけをとることの是非です。
 まったくそのとおりだと思います。スピードだけの問題ではありません。
 心地よく、入力できるかということのほうが、じつは大きいと思います。
 私の場合、慣れてしまっているためか、ローマ字入力も非常に心地よく入力することができます。

>使っていて疲れない、自然に使える、という感覚的な面で親指シフトを選択しているということが多い気がします
 人によって、親指ソフト入力を好む人もいることは確かです。

 他方、「『超』整理法」の野口悠紀雄先生とか、「キーボード革命」「「パソコンをどう使うか」の諏訪邦夫先生たちは、著書の中で、(親指ソフトを否定せずに)ローマ字入力を勧めていることも事実です。

>(親指シフトの開発の責任者は神田さんです。森田さんはNECで「M式」とよばれるキーボードを開発した人です。)
 そうでした。この点は、私の記憶違いでした。

こんにちは。初めまして。親指シフトに馴れてしまっている人間です。ちょっとびっくりなのは、「200LXでも「親指ひゅん」のアプリケーションを常駐させる必要があります」というところです。200LX、縦書きモーとで愛用していました(今も手元にあります)。親指シフトにはしませんでしたよ。qwerty配列のキーボードでのローマ字入力と、親指シフトでの日本語を入力の両方を使い分けています。で、自分の身には、親指シフトが一番合っていると感じています。そういう人間に「も」道が広くなっているといいなぁと思っています。親指シフトキーボードって、もちろんローマ字打ちも出来るんですもんね。

沢野 さん、コメントをありがとうございます。

200LXでも、常駐アプリをいれることで、擬似親指シフトにすることができます。私は、ちょっとトライしてみたことがあります。

でも、私には親指シフト入力は向きませんでした。

200LXの場合は、r2k100を常駐させることで、(自分で設定すれば)ドボラック配列にもできますし、NECの森田さんのような右と左に母音と子音をわけて入力するようなこともできます。(ただし、r2k100はひらがなかカタカナだけの入力)

r2k100を使わなくても、key200.txtに記述することで、キー配列をまったく好き勝手に変更することも可能です。

そういうことでも200LXは非常に柔軟性のある機械だと思います。

お返事ありがとうございます。
どうも趣旨の通りにくいコメントを書いてしまったようです。
「親指シフト方式に移管する場合、自分のパソコンのすべてに親指シフトキーボードを導入する必要があります。200LXでも「親指ひゅん」のアプリケーションを常駐させる必要があります」
この部分が、極論だなぁと感じた次第です。
200LXには200LXに合う入力方式がある。私も、200LXで親指シフト入力をたいとは思いません。
親指シフトの人間も、すべてを親指シフトにしなくては、とは思ったりしませんよ、とお伝えしたかったのです。そういう意味での制約は、親指シフト入力にのみ特別にあるわけではなく、ローマ字入力と同じ程度のものだと思います。

沢野 さん、コメントありがとうございました。

>200LXには200LXに合う入力方式がある。
>私も、200LXで親指シフト入力をたいとは思いません。
 なるほどね。アタマも手も柔軟なんですね。

 そういうふうに、場合場合によって、パフォーマンスが良いように使い分けられる能力って、うらやましいです。

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