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2018年1月21日 (日)

(728)『広辞苑』第七版が出版された。編集者こそが辞書を引け。

(728)『広辞苑』第七版が出版された。編集者こそが辞書を引け。

Hyousi今月の12日に『広辞苑』第七版が出版されるというのを、雑誌『図書』を読んで知りました。まことにめでたいです。

そういうわけで、今月号の『図書』は新版『広辞苑』の特集でした。

Jishotukuri興味深く今月号の『図書』を読んだのですが、巻頭記事の「<座談会>辞書作りと研究と文化と--『広辞苑』第七版改定によせて」の鼎談の内容はダメですね。

どんなところがダメなのか、についてお話します。

対談の小見出しを列挙すると、「『広辞苑』に入れる言葉」「学問の進展と科学の言葉」「言葉は若い人が学びなさい」「片仮名語と漢語」「辞書を引く楽しみ、つくる楽しみ」「辞書づくりと文化」となっています。
鼎談者は、木田章義(国語学)、斎藤靖二(地球科学)、増田ユリヤ(ジャーナリスト)です。

「辞書を引く楽しみ、つくる楽しみ」まで読み読んだところで、「なんじゃこりゃ」と思いました。

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斎藤 「辞書というものの強みは、(中略)、ぱっと開いて必要なものを見るんだけれども、周りにいっぱい項目があって、その項目を見ていくと、「へぇ~」と思うような知らない言葉がいっぱいある」「そういうところが、紙に印刷されて一冊に綴じられている辞書の一番の強みじゃないかと思うんです」(後略)

斎藤 「そういうものをついでに読むと面白いのに、今はそういう時代じゃなくなっている」「『広辞苑』も電子辞書では必要な項目だけ読んでおしまいになっちゃう」「だから、冊子の『広辞苑』とは、やはり違うかなという感じがします」

増田 「一覧性があるということですね。ぱっと見ると、まったく違ういろんなジャンルの項目が目に入って、それを前後に見ながら調べられるのがよさだということですね」
-------------

そういうのを「一覧性」とは言いませんっ!

「一覧性」というのは、同質のものを並べると、個々に見るよりも理解が深まるときに使う言葉で、異質のものが並んでいるときに使う言葉ではないのです。

「一覧性」という言葉では辞書に載っていなので、「一覧」という言葉の語義を見てみると、
--------------- 広辞苑 --------------------
いち‐らん【一覧】
  (2)一覧表。全体が一目で分るようにしたもの。
--------------- 大辞林 --------------------
いち_らん【一覧】
  (2)全体の概略が簡単にわかるようにまとめたもの。一覧表。「学校―」
--------------- 国語大辞典 ----------------
いち‐らん【一覧】
    2 内容が一目で分かるように、簡明に記したもの。便覧。
-------------------------------------------
というように載っています。

「ひとめでわかる」というようなときに「一覧性」という言葉を使いますが、「異質なものが並んでいる」「(一目ではなく)より詳しく読む」というようなときには使わない言葉です。

Img_20180107_230006「ことばは自由」に使ってもらっちゃ困ります。自分勝手な意味で使ってはいけません。

私の家族から、「じゃあ、そういうときはどんな言葉で表現するの?」と聞かれました。
日本語ではそういうことを表現する言葉はないと思いますね。
しいて言えば「俯瞰性」とでも言うでしょうか。

「俯瞰」という言葉を辞書で引いてみると、
--------------- 広辞苑 --------------------
ふ‐かん【俯瞰】
  高い所から見おろすこと。全体を上から見ること。
--------------- 大辞林 --------------------
ふ_かん【俯瞰】[0]
  (名)スル 高い所から見下ろすこと。鳥瞰。
--------------- 国語大辞典 ----------------
ふ‐かん【俯瞰】
    高い所から広い範囲を見おろしながめること。鳥瞰。「俯瞰撮影」「俗界を俯瞰する」
-------------------------------------------
と載っています。

「一覧」という言葉の使い方のことですが、「一覧表」という言葉を考えればよくわかります。縦横のマス目の中に整然と項目を記入したものです。エクセルなどの表に価格と品名を記入した商品一覧などを考えれば良いです。

多数の商品を「一覧表」に並べて見ることで、ひとつひとつの商品を検討していくのと違ったことがわかってくることがあります。商品全体の傾向がつかめるとか、ほかの商品と性質を比べることで、新しい視点を得ることができます。

そういうときに「一覧」という言葉を使いますが、辞書の中の一つの語義を読んでいるうちに、横にある言葉の語義にも目が行って読んでしまうという状況では「一覧性」とはいいません。

増田さんが「一覧性があるということですね」といったあとで、斎藤先生は「そうだと思うんですが、今の教育は効率を考えちゃうから、必要十分なことだけを伝えていこうとする」と話柄を変えています。

「一覧性」の言葉の使い方が正しければ、国語学者として「そうですね」と相槌を打つのでしょうが、「そうだと思うんですが、」とあいまいに答えています。

Panf座談会といっても、活字に残ってしまいますから、国語学者の斎藤先生や「図書」の編集者は、出来上がった原稿の手直しをしておくべきでしょう。

とくにこの座談会が、日本語の基準となるべく作られた辞書に関することだからです。

国語学者とか、編集者こそ、しっかり国語辞典を引いて正確な言葉遣いに注意するべきでしょう。

それができていないなら、「広辞苑」も、岩波「図書」の編集者たちも、国語学者もエセと言わざるを得ません。

ジャーナリストの増田ユリヤは、まぁ、その程度の人なんでしょうから、罪はないと思います。

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