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2020年8月16日 (日)

(874)日経新聞に『戦国大名の経済学』の書評。

(874)日経新聞に『戦国大名の経済学』の書評。

「(868)とても面白い本『戦国大名の経済学』川戸貴史著.講談社新書」でお話した本の書評が日経新聞に載っていました。

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内容は写真を見ていただけばわかりますが、「貨幣経済史を専門とする研究者が、15世紀後半以降の領国経営にあたったのか、明らかにする」「当時の貨幣価値を現在と比較した上で記述を進めているので事情がつかみやすい。たとえば、、、」という書き出しです。

中学生が書いた読書感想文なら満点の評価だと思います。本の要約としてじょうずにまとまっています。

しかし、新聞というおおやけの場所で「書評」を掲載するのは、普通は中学生じゃなくてその道の大家ですから、ソレナリの視点から書評を書いてほしいと思います。

書評を書くのには、A.まずは正確に本の内容を把握してほしいです。B.そして広い視点から見てほしいです。そのうえで、C.その本の魅力を伝えてほしいのです。

A.~C.のどれもトレーニングが必要で、簡単に熟達できるものではないです。

「A.その本の内容を把握する」ということでは、以前に「(「(129)読書術について」とか、「(131)速読法批判)」でお話したように、システマティックに内容を把握するように読む必要があります。

ここでもういちど、「本を読む本」の要約をあげておきます。
------------------
1.初級読書
小学校で学習する基本的な読み書きのこと
・中学校を終えるころには「一人前の読書」になる準備が完了し 、一生を通じて読書体験をその上に重ねていく

2.点検読書
短い限られた時間内で内容を把握すること(本の品定め)
・組織的な拾い読み(かける時間は数分~1時間)
 ・表題や序文を見る
 ・目次を調べ、本の構造を知る
 ・索引を調べる
 ・カバーのうたい文句を読む
 ・その本の要となる章をよく見る
 ・ところどころ拾い読みする
  (結論となる最後の2~3ページは必ず読む)
・表面読みでは、わからない箇所があっても地所などで調べず、 とにかく通読する
・あくまでの全体の把握を重視する
-------------------
3.分析読書
4.シントピカル読書

レベル順に下からいうと、「1.初級読書」「2.点検読書」があって、その上に「3.分析読書」「4.シントピカル読書」があるとされています(今回は3.と4.を省略)。

「2.点検読書」では、「表題」や「序文」を見る、「目次」を調べる、「カバーのうたい文句」を読む、というところから取りかかります。

(868)とても面白い本『戦国大名の経済学』川戸貴史著.講談社新書.」をみれば、「表題」は「戦国大名の経済学」です。つまり、「経済的な側面から戦国大名を検討してみる」のがこの本の目的だということがわかります。本の帯も同じようなことが書かれています。

「序文」を見てみます。(868)に書いてあるように、「戦国大名は平時から、自領内での経済力の増大に、つねに意を注がなければなりませんでした」「お金がなければ戦争など、できうるべくもなかったのです。」「専門家が書いたものとして1冊の新書全体でこの問題を扱ったものは、現在、ほぼ皆無に近い状態です」とあります。

つまり、経済的な視点から戦国大名を扱った本は、この本が嚆矢であるというのです。

ここが重要なことです。じつは著者は自信たっぷりです。
細部まで詳しくは検討できないけれど、「経済的な視点からの戦国大名を扱うのはオレさまだけだよ」と言っているのです。
「そういう視点でこの本を読んでほしい」というのが著者の願いです。

日経新聞に掲載された書評は、本の要約としては確かにじょうずです。
しかし、著者の主張とか願いは組み上げていません。そういう点からは、専門家の書評とは言えないと思います。

話はちょっと逸れますが、私が大学で若い人たちに論文の書き方を教えていたときには、「タイトルは論文の趣旨を十分に表現するように決める」と教えていたほかに、「要約」の書き方も教えていました。

「1.この領域でいままでどんなことが解明されてきたか」「2.まだ解明されていないのはどんなことか」「今までわかっていなかったことを、(新しいアプローチで)この論文で解明した」というように自分の論文を位置づけるようにと教えていました。

この本でいうと、「1.いままで戦国大名について各方面からの研究がなされている」「2.しかし、領国運営について、資料をもとに経済的な面からはじゅうぶんに解明されていない」「3.この本で、いままで検討されていなかった経済面での領国運営の解明に取り組んだ」ということになるでしょう。

大人の書評、専門家の書評というのは、著者の主張をじゅうぶんくみ取った上で、非専門家にその魅力を伝えるような書き方であるべきです。
この書評では、著者の主張をじゅうぶんに紹介していません。

本の要約を掲載するだけなら、「中学生レベルでは100点満点っ!」といえる程度の書評でしかないと思います。

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